パソコンショップ・家電売場で通算12年ほど働いていた鈴木です。
たまに「買ってはいけない家電」という特集がネットでも雑誌でも掲載されることがありますが、これは本当に買ってはいけない家電なのでしょうか?
実際には感覚だけで言われていることもあるので、パソコンショップ・家電売場で通算12年働いた経験から、本当に買ってはいけない家電製品はあるのか説明します。
客観的数字で述べられていない「買ってはいけない家電」
ちょっと古い記事ですが、SPAで掲載された記事を見てください。
家電販売歴9年の方が海外メーカーは「安かろう悪かろう」で故障が多いから買うべきでは無いと書かれています。
これは本当なのか?と言えばその人にとっては事実なのかもしれませんが、客観的に見た時にはどうか、データが無ければわかりません。
何台販売して、何台修理を受けたのか、各メーカー単位の数字で示してくれないと本当に故障が多いのか、具体的な数字があってはじめて故障が多いのか少ないのか判断できます。
もっとも家電製品なんて、どういう環境で使われているのかわからないので、製品に由来する故障率なんて、わかりません。
例えば洗濯機、今では室内置きが増えてきましたが、外置きで使っている人もいます。
- 洗濯機の室内置きでの故障率
- 洗濯機の外置きでの故障率
また使用頻度も関係してきます。
- 1日平均1回未満の使用頻度
- 1日5回以上の使用頻度
または
- 2万円の洗濯機・500回使ったら壊れた
- 4万円の洗濯機・1000回使ったら壊れた
1回辺りの洗濯にかかった洗濯機代のコストは同じですが、2万円の洗濯機の方が早く壊れたと思うのは当然です。
このようにどういう状況で使われていたのか、統計を取ったら案外違いは無いのかもしれませんが、そういうデータは公表されていません。
ただ家電量販店に勤める人が故障が多い家電メーカーがあると思うのは致し方ないことなのかもしれません。
僕も以前は、そういう感覚を持ってしまっていたから。
昔はあるメーカーのパソコンは故障が多いと言われていた
以前、パソコンショップで働いていた時、とあるメーカーのパソコンの故障が多いイメージを持っていました。
壊れた!というクレームをよく受けていたので、そのメーカーのパソコンは売りたくないと思ったほど。
でも、データとして客観的に故障率を出した場合、確かに若干は故障率が高いもののそれほど他のメーカーと比べて際立っている訳ではありませんでした。
例えば3ヶ月間で500台のパソコンを販売したとします。
その時の販売台数と半年で故障で持ち込まれた件数は下記のような状態でした。
メーカー | 販売台数 | 故障件数 | 故障率 |
---|---|---|---|
A社 | 100台 | 5台 | 5.00% |
B社 | 80台 | 4台 | 5.00% |
C社 | 80台 | 5台 | 6.25% |
D社 | 240台 | 16台 | 6.67% |
合計 | 500台 | 30台 | 6.00% |
上記の中で故障が多くて、もう売りたくない!と思っていたパソコンメーカーはD社です。
でも、データで見てみると、それほど故障率が際立っている訳ではありません。
B社とC社を見てもらえばわかりますが、故障率で1.25%の開きがありますが、4台と5台の差は1台、たまたまの偶然の可能性があります。
そして、C社とD社も故障率で言えば誤差の範囲です。
もう1度データを見て下さい。
半年間で16台の故障を持ち込まれるということは、1週間で1.2台くらい修理を持ち込まれるペースです。
半年間で5台の修理なら1ヶ月に1台弱、修理に持ち込まれるペースです。
- 1週間で1.2台、修理に持ち込まれるメーカー
- 1ヶ月で1台あるかどうか、修理に持ち込まれるメーカー
あなたは、この場合感覚的にそれほど故障の割合が変わらないと気づけますか?
僕は無理でした。どうしても毎週持ち込まれるD社が圧倒的に故障が多いという感覚になってしまったから。
つまり販売台数が多かった結果、当然故障したと言われる割合も多くなり、結果として故障が多いメーカーという認識が家電量販店やパソコンショップの人の中には生まれる訳です。
ハイアールの冷蔵庫・洗濯機は春先に滅茶苦茶売っている
故障が多いとよく言われるハイアールの冷蔵庫や洗濯機
でもハイアールの冷蔵庫・洗濯機というのは春先に滅茶苦茶売れるんですよね。
それは大学進学や就職で初めて1人暮らしをする人が安いという理由で買うからです。恐らく他のメーカーの2~3倍くらい販売しているんじゃないかと思います。
実際に僕が販売していた時の台数で言えば国内大手メーカーの2.5倍くらいの販売台数でした。
特にハイアールの洗濯機や冷蔵庫は一人暮らしセット5万円均一とか10万円均一と、どこもかなり販売しています。
で、販売して半年から1年、やはり修理を依頼されるケースで最も多いのはハイアールでしたが、これは当然です。販売台数が最も多いのですから。
冷静に販売台数から故障台数のデータを出してみれば極端な差はまずありません。
確かに若干ですが、海外メーカーの方が故障率は高くはなります。
しかし誤差の範囲と言えないことも無いレベルです。
そうは言っても確かに日本メーカーの物は故障が少ない
もちろんそうは言っても日本メーカーのものは故障は僅かですが少ないです。
その僅かにこだわって作っているのが日本メーカーの特色ですから。
100個作って5個不良品があれば、100個完璧な商品を目指すのが日本、105個出荷するのが海外メーカーという例えが昔はよくされました。
長く使うのなら確かに大手国内メーカーの方が良いと言えます。
でも、安いメーカーでも家電量販店の長期延長保証に入っておけばそれなりに故障に関しては対応してもらえます。
なお、日本メーカーは日本の気候にあった製品を作りますが海外メーカーは日本でも売れる製品を作ります。
- 日本メーカー=日本で売るために日本用に作る
- 海外メーカー=日本でも売れるように作る
「日本用に作る」と「日本でも売れるように作る」では完成度が違ってくるのは当然です。その分海外メーカーは安くしてくるのですから。
家電製品の平均使用年数
参考までに家電製品の平均使用年数を紹介します。
このデータは一般財団法人「家電製品協会」が内閣府の依頼をうけて調査したものです。
品目 | 2018年 | 2019年 | 一般的に 言われる寿命 |
---|---|---|---|
冷蔵庫 | 12.2年 | 13.2年 | 10年くらい |
洗濯機 | 10.8年 | 10.5年 | 7~8年 |
掃除機 | 8.4年 | 8.5年 | 7~8年 |
ルームエアコン | 13.6年 | 13.8年 | 7~12年 |
カラーテレビ | 9.5年 | 9.2年 | 7~10年 |
パソコン | 7.0年 | 6.7年 | 5年 |
レコーダー | 7.3年 | 6.9年 | 5年 |
実際には一般的に言われている寿命よりも長く家電製品を使っている人が多いことがわかります。
ただ先にも述べた通り、平均値であって、洗濯機で外置きと室内置き、使用頻度等で寿命は全く異なってきます。
洗濯機にはモーター及びベルトが必ずありますが、ベルトは必ず伸びるもののため、使用頻度で寿命が変化します。
カラーテレビ(液晶テレビ)にはバックライトという電球みたいなものがついていますが、バックライトの寿命は5~6万時間と言われており、ずっとテレビをつけたままなら5~7年で寿命がきます。
なお寿命が来ても修理できる場合もありますが、5~10年経過すると家電製品は電気代がかなり安くなるように改善されています。
そのため新たに購入して5~10年使うことを考えた方が結果として安くなります。
以上、買ってはいけない家電製品についてでした。
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